PAUL BLEY/NHOP:1973年に録音された即興の中にある静けさ

 

アルバム『PAUL BLAY/NHOP』を知ったのは、Jaco Pastoriusが参加していたアルバム『JACO PASTORIUS & PAT METHENY & BRUCE DITMAS & PAUL BLEY』にハマったことがきっかけでした。

 

 

このアルバムに魅せられて、プロデューサーとしてクレジットされていたPaul Bley(ポール・ブレイ)というアーティストを知り、彼のアルバムを聴いていくうちに『PAUL BLAY/NHOP』を気に入ってレコードを購入したことが、今回のブログを書くはじまりとなりました。

 

 

アルバム『PAUL BLAY/NHOP』とは

PAUL BLAY/NHOP』は、カナダ出身のピアニスト『Paul Bley(ポール・ブレイ)』とデンマーク出身のベーシスト『ニールス・ヘニング・オルステッド・ペデルセン(Niels-Henning Ørsted Pedersen、NHOP)』によるデュオアルバムです。

 

アルバム詳細

タイトルPAUL BLAY/NHOP
メンバーPaul Bley(ポール・ブレイ)
Niels-Henning Ørsted Pedersen、NHOP(ニールス・ヘニング・オルステッド・ペデルセン)
録音1973年6月24日と7月1日
録音場所コペンハーゲン、デンマーク
レーベルSteepleChase Records
リリース1973年
プロデューサーNils Winther

     

    PAUL BLAY/NHOP』が録音された1970年代初頭、ジャズシーンは大きな変革期を迎えていたそうです。フリージャズの台頭やフュージョンの勃興など、新しい潮流が生まれる中、このアルバムは伝統とアヴァンギャルドの融合を体現する作品として誕生しました。

     

    Paul Bleyは1960年代、Ornette Colemanらと共にフリージャズの最前線で活躍した後、より内省的なスタイルへと移行していました。一方、NHOPは伝統的なジャズの名手として知られていました。この一見ミスマッチな組み合わせが、新鮮で魅力的な音楽を生み出したと言われています。

     

    楽曲はほぼPaul Bleyの作曲によるものですが、A4が『Carla Bley』B5が『Annette Peacock』の楽曲となっています。

     

     

    PAUL BLAY/NHOP』楽曲リスト

     

    PAUL BLAY/NHOP』は9曲で構成され、それぞれの楽曲が独自の音の物語を描き出しています。

     

    全体的には静かで内省的な雰囲気が漂っており、2人の対話的な演奏が特徴的です。シンプルな構成ながらも複雑な感情が表現されており、インテリジェンスとエモーショナルな部分が共存しているように感じます。

     

     

    1. “Meeting” (6:03)
      ブレイの自由なピアノとNHOPの重厚なベースが初めての会話を交わすかのように絡み合う曲で、静けさの中に躍動感が潜んでいます。

    2. “Mating of Urgency” (4:51)
      タイトル通りの緊迫感が漂う楽曲で、エレクトリックピアノの使用が新しい時代の兆しを反映しています。

    3. “Carla” (4:21)
      ブレイの元妻カーラ・ブレイ(Carla Bley)に捧げたとされる楽曲で、情感豊かなピアノとNHOPの滑らかなベースラインが心地よく響きます。

    4. “Olhos de Gato” (5:33)
      カーラ・ブレイ作曲のこの曲はブラジル音楽の影響を受けており、メロディアスな側面が強調されています。NHOPのベースソロが印象的です。

    5. “Paradise Island” (2:20)
      軽快で南国の雰囲気が漂う短い楽曲ですが、豊かな音色が際立っています。

    6. “Upstairs” (3:07)
      タイトルの通り、上昇感のあるメロディが印象的な曲です。

    7. “Later” (5:23)
      静かなテンポから始まり、徐々に音楽的な複雑さが増していく構成が魅力です。

    8. “Summer” (4:06)
      夏の解放感を感じさせる爽やかな楽曲で、ピアノとベースの掛け合いが特に心地よいです。

    9. “Gesture Without Plot” (5:33)
      アネット・ピーコック(Annette Peacock)作曲のこの曲は即興性が高く、自由な演奏が際立っています。

     

     

    Paul Bley(ポール・ブレイ)とは

    Paul Bley(ポール・ブレイ)』は、カナダのモントリオール出身のジャズピアニストです。1950年代にニューヨークに進出し、Charlie Mingusらと共演。1960年代には、Ornette ColemanやAlbert Aylerらと共にフリージャズの最前線で活躍しました。その後、より内省的なスタイルへと移行し、エレクトリック・キーボードも取り入れるなど、常に革新的なアプローチで音楽を追求し続けました。

     

    Niels-Henning Ørsted Pedersen (NHOP)とは

    NHOPは、デンマーク出身のジャズベーシストです。若くしてOscar Petersonらと共演し、その卓越した技術で世界的に認められました。伝統的なジャズの名手として知られ、Ben Webster、Dexter Gordon、Dizzy Gillespieなど、多くのジャズの巨匠たちと共演しています。彼の正確無比なリズム感と豊かな音色は、多くのミュージシャンから絶賛されました。このアルバムは、異なるバックグラウンドを持つ二人のアーティストが、互いの音楽性を尊重しながら創り上げたアルバムです。

     

     

    PAUL BLAY/NHOP』まとめ

    このアルバムを初めて聴いたとき、その独特の暗さと静けさに心を引き込まれました。ポール・ブレイとNHOPのシンプルな演奏の中に深い感情が宿っているように感じます。

     

    その後も何度も聴き返すうちに、このアルバムはただの即興演奏を超え、一種の『音の対話』としての深みを感じるようになりました。ブレイのピアノが紡ぐ繊細なメロディーと、NHOPのリズム感あふれるベースが絶妙に絡み合い、互いに響き合う瞬間が生まれるたびに、新たな感情の風景を見ます。曲ごとに展開するダイナミクスと間の取り方は、一つの物語を聴いているかのように心に残ります。

     

    また、このアルバムには1970年代というジャズの変革期を背景にした独特の空気感があり、それが演奏の中に潜んでいる影響も感じ取れます。伝統的なジャズの要素を残しつつも、前衛的なアプローチをとったと言われる、そのバランスがアルバム全体を特別なものにしているのかもしれません。

     

    静謐な美しさの中に隠された力強さや躍動感が音の本質を際立たせ、彼らの音の世界へ連れていってくれるのだと思います。

     

     

     

     

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