
2025年3月17日(月) 東京、晴れ、でも寒い。
カーテンを開けると、空がすっきりと晴れていた。
昨日の雨がすべて洗い流されて、ビルの窓も、電線も、空の青さに吸い込まれるように静かだった。
でも、外の空気はまだ冷たい。
春が「まだいいかな」と迷っているみたいだ。
コーヒーを淹れる。
朝の静けさに、何か音を足したくなる。
棚の奥に目をやると、キース・ジャレットの「ステアケース」があった。
「ケルン・コンサート」ほどの熱量ではなく、もう少し、落ち着いていて、流れるような音楽。
ステアケース、階段。
このアルバムをかけると、音のひとつひとつが、なめらかに降りていくように感じる。
あるいは、どこかへ登っていくような気もする。
レコードの針を落とす。
部屋に広がる、柔らかなピアノの音。
空間が音に満たされる。
「ステアケース」の音は、どこか水に似ている。
流れつづけるピアノの音が、川のせせらぎみたいに耳に入ってくる。
あるいは、午後の静かな雨みたいに、床や壁にやさしく染み込んでいく。
今日がどんな日になるのかは、まだわからない。
でも、この音を聴いている間は、
「まあ、なんとかなるだろう」と思える。
ピアノが、淡々と、でも確かに進んでいくように、今日もどこかへ向かっていくのだろう。
寒いけれど、春は近い。
この音を聴きながら、もう少しだけ、冬と春の間にいる時間を楽しんでみよう。