最近よく聴いているThomas BrinkmannとOren Ambarchiが2012年にリリースしたコラボレーションアルバム『The Mortimer Trap』について書いてみたいと思います。
まず両者の紹介を少し。
『Thomas Brinkmann(トーマス・ブリンクマン)』はProfanや自身のレーベルMax.Ernstから数々の傑作をリリースしてきたドイツ・ミニマルテクノのイノベーター的な存在。
レコードの溝にナイフでキズを入れてフレーズを作り、その音をイコライジングしてトラックを構築していく実験的なライブは必見です。
『Oren Ambarchi(オーレン・アンバーチ)』はEDITIONS MEGOやTouchといった名門音響派レーベルから実験的な作品をリリースし続けているサウンドアーティスト。
(今は亡きスーパーデラックスでライブを観たけど最高だった。)
『Black Truffle』というレーベルを運営しており『The Mortimer Trap』がリリースされたのもここ。
Thomas Brinkmann & Oren Ambarchi “The Mortimer Trap”
Artist | Thomas Brinkmann & Oren Ambarchi |
Title | The Mortimer Trap |
Label | Black Truffle |
Release date | 2012/02/13 |
Cat No | bt06 |
このアルバムはYouTubeなどにはアップされていませんでしたが、Black Truffle Bandcampより『The Mortimer Trap』を購入・視聴することができます。以下からどうぞ。
Thomas BrinkmannとOren Ambarchiがコラボレーションした『The Mortimer Trap』は、作曲家Morton Feldmanのピアノ曲『For Bunita Marcus』へのオマージュとされています。
Morton Feldman『For Bunita Marcus』へのオマージュ
Morton Feldmanのオリジナル『For Bunita Marcus』はポーン、キーンと空気の隙間を縫うように鳴るピアノ曲。
ピアノが鳴っている空気感、『間』をそのまま感じられるアコースティックでミニマルな作品です。
オリジナルの『For Bunita Marcus』は曲を構成するのに『間』が大きな要素を果たしているのに対して
Thomas BrinkmannとOren Ambarchiが作り上げた曲は電子音とギターのドローンによって『間』が音で埋め尽くされた対象的な作りをしています。
「間を聴かせるオリジナル」と「間を埋めるオマージュ」
真逆のアプローチをとっている両曲ですが、リスナーの聴く環境で印象が大きく変わるという点は類似するところがあります。
まさにディープリスニング向け。
77分に及ぶサウンドジャニー
『The Mortimer Trap』は、1曲で75分あるドローンを基調とした曲。
わずかな音の変化と揺らぎが永遠に続かのような前半と、反復するリズムによって徐々にビルドアップしていく後半。
前半部分だけ聴けば実験的なドローンといった印象ですが、通して聴くとドローンというよりもテクノを強く感じる曲です。
このテクノを感じさせるぬ部分はThomas Brinkmannの持つミニマリズムや構成が影響を与えているのかもしれません。
実験的なドローンが持つ音のうねりと揺れ、テクノのミニマリズムが見事に融合した『The Mortimer Trap』を聴き終えたあとの恍惚感は、アルバムを通して音の中を旅しているようです。
まさにサウンドジャーニー。おすすめアルバムです。